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Dan Godshaw 英国ブリストル大学教授
「ワタシタチハニンゲンダ!」は、日本の植民地主義の歴史と、移民・外国人・マイノリティに害をもたらす政策とを見事につなげている。英国での人種についての議論は、人種差別(racism)はヨーロッパの植民地主義だけの産物だというアイデアにとらわれることがあるが、この映画は、人種差別を、一種類のracismではなく、複数形のracism(s)として考えるべきであること、そしてグローバル・ノースを超えた地域での人種と出入国管理との関係は、関連しながらも異なる植民地的プロセスによってもたらされていることを示している。また、英国の出入国管理の研究者として、英国と日本の入管収容制度の類似性に衝撃を受け、映画を観てこのことについて、より具体的に探りたいと思うようになった。 -
水野晶子 ナレーション担当/フリーアナウンサー・朗読家
ナレーションは映像にいのちを与える。そう信じる私は、自分が腑に落ちない言葉は発するわけにいかないと、監督と事前に随分お話しさせて頂きました。知らなかった現実、目を背けてきた差別の歴史をまざまざと突き付けられ、自分が生まれ育った国を恥じる気持ちや受け入れることの辛さを味わいつつ、ナレーターとして参加しました。「ワタシタチハニンゲンダ!」という言葉を語るとき、「ワタシ」ではなく「ワタシタチ」であることに監督の意思を強く感じます。あらゆる差別に通じる怒りが込められた作品。世界中でご覧頂けますように。 -
松元ちえ ジャーナリスト
本ドキュメンタリー映画によって、非人道的な日本の入管や司法のあり方が、戦前から長きにわたって作り上げられてきたのだということが理解できる。……私たちは、国家から押し付けられた負の歴史を言われるがままに継承するのではなく、地球市民として立ち止まり、どう考え何をすべきなのか、隣人と手を取り合って同じ方向を目指さなければならない。この映画は、私たちにそう問うているように思う。(『部落解放』2023年5月号より) -
落合恵子 作家・子どもの本の専門店クレヨンハウス主宰
この社会に、政治に、法律に、強者の論理に、絶望的な違和感に憤りを覚えながら、どうしてすこやかに暮らすことが可能なのか。 わたしたち大人は子どもたちに伝えてきたはずだ。 「あなたを生きることができるのは、あなたしかいない。あなたであることを愛しなさい」と。 78年前、婚姻制度の外側でわたしを出産した母は、折に触れて幼いわたしにそう伝えた。 静かなその口調は、いまなおわたしの中に生きている。 「あなたがあなた自身であること」、「わたしがわたし自身であること」への、尊厳、矜持、かけがえのなさ。 そして丸ごとの肯定感を、踏みにじり奪うもの、それが差別だ。 だからわたしは、いかなる差別をも許容することはできない。 なぜならそうすることは、今日までわたしを生きてきた「わたし」を殺すことになるからだ。亡き母をもまた。 だからわたしは沈黙を破る。痛みへの深い思いを「あなた共有させてください」と、作品の中の、ひとりひとりに声をかけながら。 -
第 5 回「むのたけじ地域・民衆ジャーナリズム賞」大賞受賞〈選考理由〉から。共同代表(落合恵⼦、 鎌⽥慧、佐⾼信、永⽥浩三、武野⼤策)とスタッフによる選考会。
この作品は、戦後一貫して続く在日外国人差別政策を描き出した長編ドキュメンタリーです。差別・迫害問題を戦前の植民地政策、戦後の在日朝鮮人対策の歴史から説き起こし、現在の入管収容施設での数々の迫害事件を被害者へのインタビューで明らかにして、日本社会の暗部が抉り出されています。立体的に構成した点で群を抜いて、 優れた作品になっています。2時間という 長さであるが、事実を網羅的に記録しようという制作者の迫力が伝わってくる。日本 国内だけではなく、世界にも知ってもらおうと、ユニセフ協会などの国際団体にも上映企画が進められているようですが、世界に知ってもらうべき内容です。 -
早尾貴紀 東京経済大学教員
入管収容所での虐待や外国人実習生への搾取に「人権侵害!」と声を上げるならば、在日朝鮮人・朝鮮学校への差別も容認してはならない。どちらも同じ構造のレイシズムでどちらも大事というにとどまらない。そうではなく、入管問題・実習生問題の起源と土台は、戦後直後の植民地出身者(とりわけ在日朝鮮人)を排斥する入管法体制にある。前者については「許せない」と日本人は容易に言うが、後者については沈黙している。本映画は、外国人への人権侵害の数々を並べて例示しているのではなく、日本社会のダブルスタンダードを静かに穿っているはずだ。 -
前川喜平 現代教育行政研究会代表・元文部科学事務次官
髙賛侑監督の映画「ワタシタチハニンゲンダ!」は、難民認定制度、技能実習制度、朝鮮学校差別など、日本における外国人の差別や人権蹂躙の現状をはっきりと見せてくれるドキュメンタリーだ。日本国憲法の施行後七十六年。未だに多くの日本人には人権の観念が根付いていない。そんな日本人にはまずこの映画を見て、人権とは何かを学ぶところから始めてもらうしかないのだろう。(東京新聞「本音のコラム」より。2023年5月7日) -
斉加尚代 映画「教育と愛国」監督
高さんのほとばしる情熱が作品全体からあふれ出していて、この国の外国人差別に対する鋭いまなざしが、矢のように束となって見るものを射抜く内容でした。 戦前の植民地支配の民族差別を直視すらしようとせず、内務省政策が亡霊のごとく生き続けているこの国の現状を、マイノリティーの立場でいらっしゃる高さんの懸命な取材によって詳しく知ることは、重く避けられない問いを剛速球で突き付けられた思いになりました。 こうして作品にしてくださり、心より感謝いたします。 -
中学生 兵庫県
同じ人間なのにどうして差別をするのでしょうか。どうして「法律だから」という理由で人々を苦しませるのでしょうか。法律とは人々が楽しく安全に暮らすためにあるものじゃないのですか?法律があるからって、外国人をキズつけていい理由になりますか? -
毎日新聞
映画は、外国人を時に都合よく労働者として利用・管理してきた日本社会の現実や、差別を巡る闘争を時系列でひもときながら進む。 -
朝日新聞
終戦直後の朝鮮人から現在の技能実習生や難民まで、在日外国人に対する日本の「差別」を歴史的にまとめた。「世界中に差別はあるが、日本は国家が制度的に差別をつくっている」と訴える。